大判例

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東京地方裁判所 昭和36年(ワ)444号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔争点〕原告は、第一次請求として、本件建物が原告の所有であることの確認とこれについて被告のした所有権保存登記の抹消および本件建物の明渡しを求めたが、予備的請求として、仮りに本件建物が被告の所有であるとしても、本件土地は原告の所有であるから、土地所有権に基いて被告に対し、本件建物収去土地明渡しを求めた。右予備的請求に対し、被告は、原告が本件土地について所有権取得登記を経たのは、後記判示認定のような事由によるもので、被告がこれを買い受けて所有権移転登記を経ないでいるうちに、原告が悪意でこれの二重譲渡を受けたものであるから、原告は背信的悪意の取得者であり、被告の登記欠缺を主張することは許されないと抗弁した。

判決は、本件建物は被告の所有であることを認定して第一次請求を棄却し、次いで予備的請求につき、次のように事実を認定しかつ判断して、被告主張の抗弁を容れた。

〔判決理由〕……を総合すれば、被告は亡夫深川源太郎死亡後同人に対する相撲協会からの退職金をもつて東京都豊島区池袋七丁目二二〇三番地の借地上にアパートの建築を計画したが、実母訴外島崎ミワの夫である訴外島崎万蔵から天理教の神殿を造営する資金の調達に協力して貰いたいと懇請されたので、右計画を変更し、同人から本件土地を買受け、右土地上に従来居住した借地上の建物を移築して訴外島崎夫妻と隣接して居住することとしたこと、昭和三四年四月一一日地主訴外新井惣太郎の承諾を得て訴外新井一男に対し前記地番上に存する借地権四〇坪の内二〇坪を代金六四万円にて売却譲渡し、同日訴外島崎に対し本件土地の買受代金として、地主に対する借地権の譲渡承認料金七万円、譲渡周旋手数料金四万円計一一万円を控除した金五三万円を、訴外林良顕の手を経て支払つて本件土地の所有権を取得し、前認定のごとく従来居住の建物を取壊して右土地上に本件建物を移築したことを認めることができる。

そこで、被告が昭和三四年四月一一日訴外島崎から本件土地の所有権を売買により取得し、これが登記を経ていない間に、原告が同人から昭和三五年九月一〇日贈与により本件土地を含む別紙第二および第三物件目録記載の土地に対する所有権を取得して登記をした、いわゆる不動産二重譲渡の場合に該当し、悪意の取得者でも先に登記した者が優先するので、被告は原告に対して本件土地の所有権取得を対抗できないと解するのが一般であるが、本件においては、以上認定のように訴外島崎は被告に対し本件土地を売渡し既に売却代金を受領し所有権移転登記をなすべき義務を負担しながらこれを履行せず、かえつて登記手続未了に藉口して被告の所有権取得を否定し、更にその意思に基いて、訴外島崎個人が前記土地につき法の外形上第三者である原告の代表役員としての資格をもつて、原告との間において贈与のいわゆる自己契約を結んで、被告の本件土地に対する所有権の侵害となる原告のための贈与による所有権移転登記をなした特別の事実関係にあるので、被告の抗弁を順次審按することとする。

――中略――

(二) 被告主張の第二の原告が被告の本件土地の対抗力の欠缺を主張することが信義則に反するとの抗弁につき判断する。

被告は訴外島崎の前認定の不法行為によつて本件土地に対する対抗力の取得を不能に帰せしめられたが、原告は訴外島崎からの本件土地の受贈者となつて被告の対抗力取得の妨害行為に加工し、登記の申請を妨げた第三者として、あるいはむしろ、被告に対し本件土地を売却した訴外島崎に準ずべきものとして、原告が被告に対し、被告の本件土地の所有権の取得をその登記の欠缺を理由として否定することは甚だしく背信的であつて、原告には不動産登記法第四条、第五条により登記の欠缺を主張することの許されない事由乃至はその他これに類するような登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある場合に該当するものと解すべきである。 (石原辰次郎)

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